
本サマリーにおける「新規事業開発におけるブティックコンサルティング市場」とは、企業が新しい事業やビジネスモデルを立ち上げたり、新しい商品・サービスの開発を行う活動を、第三者の立場からコンサルティング・支援するブティックコンサルティング企業に対して支払われる、年間の投資・支出額を指す。ブティックコンサルティング企業とは、特定領域・専門領域に特化したコンサルティング企業のことである。
ここでいう「新規事業開発」には、事業構想、戦略立案、市場調査、営業支援・チャネル開発、テストマーケティング(POC・モック、プロトタイピングなどを含む)、人材育成、組織開発、プロダクト開発などが含まれる。一方で、企業がインハウスで実施する新規事業開発への投資や、BPO・アウトソーシングなどの外部業務委託は市場に含まれない。
また本調査は、新たな類型として「共同開発モデル」(正式には「共同開発事業モデル」)を独自に定義している。これは、ブティックコンサルティング会社が顧客企業(パートナー企業)とともに、新規事業開発およびサービスリリースの主体者となり、ビジネスを拡大させていくモデルである。コンサルティング会社が新規事業における様々なリスクを引き受けたうえで、事業化後には顧客企業への事業の譲渡・移管やジョイントベンチャーの設立など、様々な出口戦略が採用される。なお、事業売却時に支払われる支出額や、共同運営する事業での売上は市場に含まれない。
この市場の拡大は、需要側(顧客企業)、供給側(コンサルティング企業)、政策環境の三つの変化が重なって生まれている。
・需要側(顧客企業)の変化
技術革新や消費者ニーズの多様化、既存事業における市場の縮小などを背景に、企業は新たなサービスやビジネスの提供を求められる経営環境に置かれ、新規事業開発への投資意欲が高まっている。コロナ禍によるビジネス環境の大きな変化も、その意欲を押し上げるきっかけの一つとなった。新規事業開発の手段としてはM&Aやジョイントベンチャーの設立など様々な選択肢があるが、新規事業開発に特化した社内の人材育成や組織開発の観点から、コンサルティング企業など第三者への依頼も増えている。こうした投資は大企業を中心に推進されてきたが、近年は経営環境の変化や政府・自治体の支援により、中小企業においても新規事業開発への投資が進むようになってきた。
・供給側(コンサルティング企業)の変化
その結果、サービス提供を行うコンサルティング企業においても、特定領域・専門領域に特化した様々なプレイヤー、すなわちブティックコンサルティング企業が市場へ積極的に参入している。短期間・低単価によるサービス提供も増えており、これまでコンサルティングを利用しづらかった企業層にも支援が届くようになった。
・政策・制度環境
政府や自治体も、補助金・助成金を通じて企業の新規事業開発を支援している。また、企業側でカーブアウトや出向起業制度への理解が進んだことで、既存の企業とは別の企業体やチームで新規事業を進めるという選択肢が現実味を帯びてきた。これが後述する共同開発モデルの前提条件となっている。

Relic/デジタルインファクトの共同調査によれば、2024年の新規事業開発におけるブティックコンサルティング市場規模は149億円、前年比約1.2倍と推測される。
このうち、本調査の推計では「共同開発モデル」の割合が約20%を占めている。コンサルティング企業が支援者にとどまらず、事業の主体者として関与する形態が、すでに一定の規模を構成している。
なお本調査は、日本国内に限定的に存在するブティックコンサルティング企業10社を対象としたヒアリングに基づく推計であり、専門的な知見を踏まえた業界の現状と展望を示すものである。
最大のトレンドは、本調査が「共同開発モデル」と呼ぶ新たな類型の出現と、その需要の高まりである。従来のコンサルティングが、顧客企業を外部から支援する立場にとどまっていたのに対し、共同開発モデルではコンサルティング会社が顧客企業と協働し、新規事業開発およびサービスリリースの主体者となる。リスクを引き受けたうえで事業を立ち上げ、事業化後には顧客企業への譲渡・移管やジョイントベンチャー設立といった出口を選ぶ形である。なお、同種の取り組みは事業者により呼称が異なる場合がある。
このモデルが求められる理由は、大企業が抱える構造的な壁にある。社内で生まれた新規事業は、実証実験などを通じて早期に事業化を進めることが求められる。しかし特に大企業においては、コーポレートガバナンス(企業統治)に基づいた厳格なプロセスを通すことが新規事業開発の壁となる。加えて、事業化を進めることで、既存事業にはなかったレピュテーションリスクなど新たな課題も生じる。共同開発モデルは、これらの課題を解決し事業化を迅速に進める手段として、大企業を中心に需要が高まっている。また、企業におけるカーブアウトや出向起業制度への理解が進んだことからも、選択肢の一つとして着目されるようになってきた。
また、コンサルティング会社と一つの会社・チームとなって事業開発を進めること、あるいはその支援を受けることは、顧客企業の人材や組織の成長・育成にも大きく寄与している。単なる外注ではなく、協働を通じて社内に知見が蓄積される点が特徴である。
第一に、大企業における事業化プロセスの壁である。コーポレートガバナンスに基づく厳格な手続きは、企業統治の観点からは必要なものである一方、スピードが問われる新規事業開発においては制約となる。加えて、新規事業の展開に伴うレピュテーションリスクへの対応も、既存事業では顕在化しなかった新たな論点である。
第二に、参入増加に伴う競争環境の変化である。多様なプレイヤーの参入により、短期間・低単価によるサービス提供が増えている。これは市場の裾野を広げる一方で、支援の質をどう担保するかという課題を伴う。専門特化を強みとするブティックコンサルティング企業にとって、価格ではなく提供価値で選ばれる状態をどう築くかが問われる。
第三に、市場規模の把握そのものの難しさである。本調査は国内に限定的に存在する10社へのヒアリングに基づくものであり、対象事業者の数は限られている。市場が黎明期から成長期へ移行するなかで、事業者数や取引形態の把握を継続的に更新していくことが求められる。
同調査によれば、2029年の市場規模は2024年比約2.4倍にあたる363億円に達すると予測される。年平均に換算すると約20%の高い成長率であり、成長期にある市場といえる。
成長を支える要因は二つある。一つは、新規事業開発への啓発やノウハウの普及が進むことで、長期的な視点での投資意欲が高まる点である。同調査は、こうした流れのなかで「事業の収益化段階(アーリーステージ)」でのさらなる投資が進むことに期待を示している。
もう一つは、共同開発モデルの定着である。カーブアウトと合わせ、既存の企業とは別の企業体やチームで新規事業開発を進めていく機運が高まることにより、継続的な市場成長が見込まれる。コンサルティング企業が「支援する側」から「事業をともに担う側」へと役割を広げていくことが、この市場の性格を規定していくと考えられる。
出典:Relic/デジタルインファクト共同調査「新規事業開発におけるブティックコンサルティング市場に関する調査」(2025年2月4日発表、調査時期:2024年7月〜10月、ヒアリング調査数:業界関係者10社)

株式会社デジタルインファクト / 代表取締役社長
慶応義塾大学経済学部卒。外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。